That's Japanシリーズ
概要
吉本隆明の最も新しいポジションが、本書に集約されている!!
日本最高峰の思想家 吉本隆明と、新進気鋭の精神科医 高岡健の、10年前、5年前、そして今年と、足掛け10年にわたる対談を経て明かされた、「日本」という“時代病”。
“時代病”とは、あらゆる境界が入り組んでボーダレスになり、かつ解体していく時代の流れの中で、人がこれまでの価値観を失い、生きづらく感じて自殺や反抗に走ることを言う。
我々は果たして、“時代病”から脱して、新しい時代を生き抜くことができるのか。“時代病”を克服する人間の営みとは、そして日本はどうあるべきか!
本書で語られている“時代病”
太平洋戦争、左翼運動、60年安保闘争、全共闘運動、連合赤軍、オウム真理教、フェミニズム、消費資本主義、登校拒否・引きこもり、精神病、三島由紀夫事件、天皇制、フリーター、ライブドア問題、子どもと大人、個人的な自己・社会的な自己、老人問題 ほか
本書で語られた人物
三島由紀夫、毛沢東、村上一郎、島成郎、麻原彰晃、森山公夫、山本義隆、フーコー、親鸞、エンゲルス、マルクス、上野千鶴子、フロイト、丸山真男、森_外、桶谷秀昭、江藤淳、田中角栄、西郷隆盛、保田與重郎、天皇、空海、M・ウェーバー、大江健三郎、岸上大作、堀口統三、山田詠美、ホリエモン、レーニン、J・シュンペーター、三浦つとむ ほか
吉本隆明(思想家)
1924年東京生まれ。東京工業大学卒業。詩人として出発し、戦後は文芸評論家としても名を馳せる。『擬制の終焉』(現代思潮社)は60年安保のあと、『敗北の構造』(弓立社)は全共闘運動のあとに発刊され、大きな反響を呼ぶ。一方、『言語にとって美とは何か』(勁草書房)『共同幻想論』(河出書房新社)『心的現象論序説』(北洋社)などにより前人未踏の領野を開拓して論陣を張り、花田清輝、鮎川信夫、埴谷雄高などとの論争でも知られる、日本屈指の思想家。『マス・イメージ論』『ハイ・イメージ論』(福武書店)など著書多数。
高岡健(精神科医、岐阜大学助教授)
1953年徳島県生まれ。岐阜大学医学部卒業。岐阜赤十字病院精神科部長などを経て、現在、岐阜大学医学部助教授。児童精神医学、総合病院精神医学、精神病理学が専門で、精神鑑定についても造詣が深い。明治の文学関係など幅広い知識を駆使し、一貫して不登校や引きこもりを擁護する立場から論陣を張る。「ザッツジャパン」シリーズ『010 引きこもりを恐れず』、『教育「真」論』(弊社刊)、『メディアと精神科医』(批評社)、『別れの精神哲学』(雲母書房)ほか。
目次
第一章 社会の変容に精神がしてきたこと
オウム真理教事件から見た日本社会の病
新しい消費資本主義の登場による倫理の混乱と解体
心身のコントロールがうまくできない時代の到来
オウム真理教事件を親鸞的に解釈すると
必要なのはこれまでとは違うモラルの構築
転換点としての一九七〇年代——バーチャル・リアリティの出現
時代に対する拒否反応としての子どもたちの登校拒否
エディプス理論を超える新しい治療と思想の必要性
無意識という概念に起こっている変化
精神医学の新しい課題——バーチャル・リアリティとしての無意識
第二章 社会を変えようとした若者、若者を変えてしまった社会
全共闘運動を弾圧した当時のリベラル派教授たちのバックグラウンド
安保ブントの島成郎が対峙した時代
六〇年安保闘争は後始末がたいへんだった
六〇年は政府や政権に反抗する最後のチャンス
全共闘運動を体験した高校はいい学校になっている
いい面でも悪い面でも全共闘運動は社会を先取りしていた
普遍性より特殊性が問われる時代
全共闘と三島由紀夫の共通点・相違点
生き神様主義は日本固有の考え方
日本社会の独自性を見極める必要がある
思想で重要なことは真理にどれだけ近いかということ
超資本主義社会に追いついていない日本の機構や体制
フリーターに見られる社会に対する積極的な意味性
九〇年以降に見られる若者の差異化脅迫の思考と行動
子どもの時間とおとなの時間には流れの相違がある
少年法の刑罰適用範囲の年齢を下げることの問題点
技術が進歩しても変わらない精神の部分がたいせつ
第三章 いい時代をつくるための精神をどう養うか
六〇年安保の時代死としての岸上大作
敗戦直後の時代死としての原口統三
時代病は社会の変化に対応できない精神に起こる
女が男になりたがっているいまの時代は過渡期である
「個人的な自己」と「社会的な自己」がはっきりと自分の中で分離されていない
日本の古臭い資本主義を刺激した堀江ライブドア
共同幻想の変容が引き起こしている年三万人の自殺
「主役は女性」時代の到来と問題点
追い詰めると「人間力=人間が描きうる可能性」が残ることがマルクスの偉大さ
必要なのは「人間力」を殺さない社会、そして時代