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That's Japanシリーズ

「国境なき医師団」が行く

「国境なき医師団」が行く (絶版)

貫戸朋子 著

価格 750円(本体価格)+税 
ISBN 978-4901391-34-4
発売日 2003/06
ページ数 136ページ
版型 A5変形判 ソフトカバー
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概要

会員10万人、日本最大級NGOの奮闘!!

「国境なき医師団」は、民間医療援助団体として80の国や地域にスタッフを派遣している。貧困な政治や資源の争奪が、飢餓や虐殺、民族浄化、難民を生み続ける現場で、生命がけで人道援助活動を続けている。「国境なき医師団」は、使命感と「拒否の論理」で強く結ばれている。時にラディカルに政治の変革を迫るのは、その解決抜きに飢えと病気に苦しむ人々の救済がないことを知っているからだ。
貫戸朋子は、「国境なき医師団」の一員としてスリランカやボスニア・ヘルツェゴビナで診療に従事し、医師の倫理や人道援助の意味を問い続けてきた。西洋とアジアの深い溝も味わった。しかし、個々人の使命に支えられた活動が、世の中を、政治を変える原動力になるという確かな手ごたえも得た。貫戸は本書で、これからの新しい世界を担うNPO・NGOの活動に、多くの示唆を提示している。

貫戸朋子(国境なき医師団 プログラムディレクター)

京都市生まれ。東京女子医大卒業後、ジョンズ・ホプキンス大公衆衛生大学院で修士課程修了。産婦人科医。京大付属病院などを経て93年に国境なき医師団に参加、スリランカとボスニア・ヘルツェゴビナの人道医療活動に従事。その経緯は『国境なき医師団・貫戸朋子』(KTC中央出版)にも詳しい。03年からは特定非営利活動法人「国境なき医師団日本」のプログラムディレクターとして世界と日本、現地間の調整役をこなし、国内ではホームレス支援プログラムを立ちあげている。

目次

私たちの待合室には何千万もの人々がいる

医療が受けられない人に医療を施すという使命
医療の欠如は社会そのものの欠陥である
不公平な世の中で「中立」たりうるのか?
フランス5月革命から生まれたラディカルな人道主義
先発隊としてのプログラムの独立性に責任をもつ
「国境なき医師団」は永遠の運動体である
独自のロジスティックスで大きく飛躍した
日本を資金源と見る「プラグマティズム」
医療と食糧、どちらを優先するのか
急進性を失わないための組織論
フランス人、オランダ人に見る旧宗主国の影響
「医療と人道の理念」が分裂をおしとどめる
あえて拮抗する「群れ」を選ぶ
人道援助はジレンマがつきまとう
誰が主役なのかを忘れてはいけない
政治に利用されない強い意志

「たかがNGO」が力をもつ

現場優先のネットワークをつくる
現地に入るシステムと危機管理ができている
人生は、どこかで自分を突き抜けないと変われない
「たかがNGO」、だから自分たちにできることだけを確実に実行する
西洋型の価値観のみでは長続きしない
「無料」サービスが人々の生活を混乱させる
日本の「国境なき医師団」は11年前に生まれた
MSF日本の「あり方」の哲学
日本人が外国人にかかわることの難しさ
日本人が直面する「アンフェア」はたいしたことではない
NGO後進国だからと「遠慮」する必要はない
医療が抱えている矛盾は世界共通だ
粘り強い交渉によって、現地に入る
意思表示にみる文化の差
非主流である日本人の存在価値
非主流となることの勧め
国境はないが「差別」や「錯誤」はある

NGOから日本を変える

NGOは自分たちが成長する場である
「ボランティア」という言葉の心地悪さ
医師と看護師、男と女では自由度が違う
人間らしい仕事を求めてくる
プログラムと人材の組み合わせが難しい
プロ意識がないとダメ
MSFも日本社会も同じタイプの医者を求めている
地元の人はボランティアを見ている
日本がアジアの情報発信源になる
国内で「野宿者プログラム」を開始
難民キャンプと同じ状況が日本にもある
人間の魅力は「型」でおしはかれない
個人の価値を優先させることにNGOの意味がある
女性が生きにくい日本で、自分の方向を決める
日本は現場で信頼されるしか道がない
現場体験を日本社会にフィードバックする
MSF日本の真価を自己完結させない

書評・感想

「国境なき医師団」が行く」(貫戸朋子著)を読んで

医師という手に職をもった人たちのNGOやNPOでも、西欧中心主義が強く、日本人は非主流として扱われていることに驚きを感じた。そして支援されているスリランカの人たちが「国境なき医師団」の西欧人、日本人をどう見ているかを著者が冷静に見つめているのがおもしろかった。(奈良県 男性)
国境なき医師団で活動している皆さんには心からご苦労様の気持ちを送ります。今回のイラク戦争により日本のNGOの方々もまた活動しづらくなることが心配です。反戦の声を大きく叫び続けます。(東京都 39歳女性)
以前TVや新聞で貫戸さんの事を知り、“う〜ん 気持ち分かるガンバレッ”と思っていました。私もスリランカのマンナールというところに2年ほど居たのですが、その時MSFの人達やセーブザチルドレンの人達と長屋の様な生活を1987,8年としていました。その後フィリピンとかカンボジア、ソマリア、タイと居たのですが、若い頃のことを少し想い出して、苦悩と喜び、希望と無力感の中で多くのことを学んだとなつかしく思いました。貫戸さん、無理せず、でも頑張ってください(大阪府 女性)
MSFについてその一員でありながら客観的に書かれていた。ホームページ、ニューズレターなどでは全く分からない日本MSFの立場やMSF組織についても書かれていてよくわかった。貫戸さんがMSFのビジョンをもっていたように、自分も含めた市民がそれぞれ社会の中でどう生きていくのかを考えていかなければいけないと思いました。(京都府)
何の偏見もなく、全ての医療の必要な人に医療を施すというイメージの「国境なき医師団」にも白人至上主義の偏見が大きいことの記述に共感(と驚き)を覚えた。筆者の言う「非主流の日本」が非主流だから出来ることについて、私も一緒に考えていきたい。(神奈川県 男性)