That's Japanシリーズ
概要
自然派作家が語る身の丈にあわせた生き方と宗教観
人は旅に何を求めるのだろうか? 快楽だろうか、精神のやすらぎだろうか?
日本人の死生観は人生を「旅」と教え、死装束で旅に出た。芭蕉がそうであり、四国の巡礼たちがそうである。日常を離れて人生を問うこと、それは人生50年の昔も高齢社会の現在も変わらない。底に流れているのは釈迦の思想であり、自然をどう捉え、どう向き合うかということだ。しかし、旅人を取り巻く自然や農村の姿は既に荒廃の兆しを見せている。
作家立松和平は、「貧者の一灯」のように木を植え、米をつくる努力を営々と続けている。身の丈のシャツを着るように、できること、確かなことからやろうというミニマムの思想によって、人と自然・社会との物語の復活を試みようとしている。
立松和平(作家)
1947年栃木県生まれ。早稲田大学政経学部卒。在学中に『自転車』で第1回早稲田文学新人賞受賞。土木作業員、運転手、市役所職員などを経て、80年に『遠雷』で第2回野間文芸新人賞受賞。以後、旅する行動派作家として活躍。自然や食を題材にした紀行やエッセイも数多く、環境保護のための取り組みも幅広く行っている。近著に『光の雨』『道元』など。02年3月には新作歌舞伎に挑戦、『道元の月』が歌舞伎座で上演された。
目次
精神のバランスを求めて旅に出る
芭蕉は46歳で旅立った
釈迦は旅に生き、旅に死んだ
いても立ってもいられない死生観
快楽をあわせもつ旅もある
奥の細道の「救い」のイメージ
50年の寿命と80年の寿命
短命の時代、人々は懸命に生きた
まだまだ生きられるという不幸
巡礼の生活を垣間見せる遍路宿
「死の練習問題」をするための旅
別の空間に旅するという死のイメージ
「パッケージ・ツアー」にも求める何かがある
求めるものが深くなっている現代の旅
巡礼の巧みなシステムがある
歩くことが瞑想につながる
巡礼は 「リハビリ道場」でもある
あらゆるところに仏がいる
「むさぼらず、へつらわない」お接待の心
「まれびと」を求める精神性
死ににくる巡礼もある
定年後、どう生きようかとみんなが悩んでいる
バブル崩壊で物質的な享楽の限界を知った
国破れて山河あり
正直で、愚直で、無名な親たちがこの国をつくった
4畳半に6人の暮らし
必死で精神のバランスをとろうとする本能
身の丈に合わせて生きる
「知床ジャーニー」をつくった理由
暮らしている海、山を再評価する
確かなものこそ普遍的
耕作放棄地をソバの花で埋める
夢がどんどんふくらんでくる
「減反」の風景から考えたこと
減反の田んぼにあえて米をつくる
いつでも回帰できる 「心の農園」がある
中国で見た 「退耕還林」プロジェクトの凄まじさ
足尾のはげ山に緑を育てる
「貧者の一灯」の精神で持続する
田中正造の教えを実践する
法隆寺から始まった「古事の森」
お坊さんたちと不思議な縁がある
10〜30年かけてテーマを追いかける
水の流れをたどり、咲く花を追う
川で遊ばない子どもたち
絶滅危惧種 「川ガキ」を養成する
時代のあり様を認識しなければならない
身の丈に合った 「ミニマム」でいいじゃないか
子どももいない農村で「ミニマム」を問う