人文・社会
概要
50年前の催涙弾が、今しみるのはなぜだろう。安田講堂攻防戦を頂点とする東大闘争、その真っただ中を駆け抜けた一人の法学部生が語る、闘いの真実。前半は、当時の東大法学部生たちの様子、安田講堂攻防戦、参加者の大学別人数、攻防戦に続く逮捕・勾留・裁判の、笑いも涙もある闘いの物語。後半は、著名な政治学者、法学部の丸山眞男教授が東大全共闘を「ナチもしなかった」と非難した、と報じられた事件を題材に、世に伝えられる史実の危うさに迫った、上質のノンフィクション。本書は、著者の体験と豊富な文献を基にした、類書にない東大闘争の記録である。
和田英二 プロフィール
1966年 東京大学文科1類入学
1968年 法学部進学
1969年 東大安田講堂攻防戦に参加
1969年 東大安田講堂攻防戦に参加
現在 自由業(東大闘争研究家)
目次
まえがき
『安田講堂戦記』地図
第一部 安田講堂戦記
序章 一九六八年秋――東大安田講堂前広場
第一章 法学部闘争委員会――安田講堂の学友諸君
第二章 前哨戦
一 情況
二 法学部無期限ストライキ――あかつきの学生大会
三 提案集会――加藤総長代行拉致作戦
四 法学部研究室の無血開城
五 医学部学生大会――流血の乱戦
六 一九六八年は暮れて行く
七 七学部集会――ラグビー場、遥かなり
八 民青外人部隊の来襲
第三章 安田講堂攻防戦
一 援軍、全国より来たる
二 残るべきか、出るべきか
三 東大全共闘、最後の集会
四 安田城
五 安田講堂攻防戦――六九年一月一八日
六 小康
七 安田講堂攻防戦――六九年一月一九日
第四章 安田講堂守備隊名鑑
一 守備隊の総数
二 大学別の人数
三 東大生は全部で何人いたか
四 法学部闘争委員会の人数
五 報じられなかった不都合な真実
第五章 警察留置場
一 初めての宿
二 留置場の風景
三 安田か? 俺は法研だ
四 O弁護士の接見
五 留置場の学友諸君
六 俺は中隊長
七 M検事の取調べ
八 家族の面会
九 留置場に起きた波紋
一〇 G巡査の別れのあいさつ
第六章 東大裁判
一 中野刑務所の日々
二 畏友の出獄
三 接見室の白熱講義
四 東京地裁の分割公判――隠されたXファイル
五 荒れる法廷
六 退廷、退廷、また退廷!
七 超タカ派判決の事実誤認
八 東京高裁の控訴審
終章 安田講堂攻防戦始末
『東大闘争 50年目のメモランダム』年表
第二部 丸山教授の遭難
序章 二〇一八年春――東京女子大学丸山眞男文庫
第一章 丸山教授の遭難
一 丸山教授のナチ発言報道
二 吉本隆明の丸山批判『収拾の論理と思想の論理』
三 講義再開阻止闘争――人民裁判
四 四面楚歌の丸山教授
第二章 丸山教授の冤罪序説
一 悪魔の証明
二 毎日ナチ発言報道の不審
第三章 法学部研究室封鎖――丸山教授の論理と心理
第四章 丸山教授の沈黙
第五章 黙る内藤、喋る庄司
一 丸山教授を囲む「’60 の会」
二 内藤國夫『ドキュメント 東大紛争』
三 まさかの悲劇
四 庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』
五 言ってはならないこと
第六章 死せる丸山、生ける教え子たちを喋らす
第七章 丸山教授の弁明
終章 民主主義の精神