人文・社会

よせやぃ。

よせやぃ。

吉本隆明 著

価格 1,800円(本体価格)+税 
ISBN 978-4-901391-85-6
発売日 2007/09
ページ数 336ページ
版型 四六判 ハードカバー
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概要

「歴史を流れるようにするための時代の自意識」とは?!
稀代の思想家が熱く問いかける、喫緊の課題と解決方法

本タイトルは、“情けないほど低レベルになっている日本”に対する著者の苦笑交じりに放つ口癖から命名したものである。

「雑談をしませんか」ということから始まってできあがった本書。5回にわたってインタビューをしたのは、“思想界”の素人たち。しかし、疑問に思っていることを愚直に真剣にお伺いしたため、吉本さんも自由奔放に語り、そのため、吉本思想がわかりやすく解明され、結果としてこれまでに類を見ない吉本隆明の“思想書”になっている。

主な内容

◆ 第1章 教育について
◆ 第2章 人間力について
◆ 第3章 自意識について
◆ 第4章 歴史を流れるようにするとは
◆ 第5章 時代の自意識について

吉本隆明(思想家)

1924年東京生まれ。東京工業大学卒業。詩人として出発し、戦後は文芸評論家としても活躍する日本屈指の思想家。『言語にとって美とはなにか』『共同幻想論』『心的現象論』の三部作により前人未踏の領野を開拓。著書が出るたびに、思想界はもちろん一般にも多大な影響を与える。『マス・イメージ論』『ハイ・イメージ論』(福武書店)、『時代病』(ウェイツ)など著書多数。

目次

教育について

中上健次はだんだん小説がへたになってきた
教え方の技術がうまい先生は、冗談じゃないぞ、全然間違いだぞと思っています
子どもを馬鹿扱いする教え方はやっぱりだめ
東大の先生は国士舘大へ、国士舘大の先生は東大へ
政治家として筋が通っているのは田中眞紀子だけですね
構想を持つ普通の人間が増えると、ひとりでに社会は変わっていく
世界的に、ここを通っていけば大丈夫だという抜け道がどこにもなくなってしまった
資本主義、超資本主義、社会主義のいずれでもないところに流れていく流れ方があるはず
拉致問題の解決のためには条約を結ぶこと
カッコよく言うと「存在論的に」我慢しているんです
日本の赤ん坊の育て方は西欧よりすばらしい
若者だって渋谷じゃなくてお遍路へ行ったほうがいい
日常生活をしている自分と物書きとしての自分を分けている
両方とも悪意は全然持っていないのに、人間関係を持つと必ず食い違いの問題が起きる
老人はみんな死ぬのを怖がっている
全共闘は左翼と自民党の様相を変えた功績があった

人間力について

人間力とは人間が理想の可能性を描き得る力
「人間力を忘れないでくれよな」と言うしかない
郵政民営化に反対というのは理念としてはない
戦時下とそう変わらないいまのジャーナリズム
旧来日本の進歩的な政党で通用している党派性は無効だよ
ホリエモンはやっぱり新しいタイプだなということはわかる気がする
いまのマスコミは戦前・戦中の尻尾が切れていない
民族国家というのは最後の国家
思想というのは引きずり超えていくもの
誰も歴史の流れをつくるようなことは言えていない
先進的な民族国家はだんだんドン詰まりに近くなってきます
まずいと思うことを修正していけば十分間に合っていく
科学であろうと宗教であろうと「死」は自分のものじゃない
楽しいことは生きる矢印で見つける

自意識について

自意識の学としての国語学とか国学が明治維新の原動力になっている
日本の変革の思想は、近世以前は中国の仏教で近代以降は基本的に国学です
これからの日本のことを少し本格的に、つまり自意識的に考えたほうがいいでしょう
いまの日本は、歴史が流れるような方策が取れなければだめだという気がします
「明治の自意識よ、もう一度」ということだけじゃないでしょうか
マイナスのところはあまり学ばなくてもいいという選択は確かなほうがいい
柳田国男と折口信夫の二人は、わりあいに自意識家じゃないでしょう
戦争に出かけていく人たちのさまざまな心境を推察することができなかった
命の重大さを思春期ぐらいになってから教えたって、言うことを聞きませんよ
親から「いい先生」と言われるような先生にならないほうがいい
暴力だって、心から思ってやったのなら決して悪い影響は与えない
家族の問題を倫理的な判断とくっつけないで、ただ身体の考古学の問題として考えていく
特に知的な人で、俺の家族は一〇〇パーセント幸福だという人には出会ったことがない

歴史を流れるようにするとは

ハイテク産業には、歴史に逆行するような使われ方の側面もある
自分への配慮を考えなければ、発達した産業の構想力は持てない
社会主義と資本主義は同じようなもの、両方ともだめ
ここが根源だというところだけは、ちゃんと押さえて考えていけばいい
先進資本主義というのは相当末期的な様相を呈している
臓器移植の問題を例に取っても、日本は全然問題にならないぐらいだめです
大勢になるほどだめで弱くなるから、本当は一人がいちばん強いんだ
戦争のことをキチンと考えないと歴史を誤る、自分の青春を誤る
イラクとアメリカの戦争は、文化的にいうと先進性と後進性の戦争
どんなにつらくても苦しくても、生きる方向に矢印を向けなければ人間の生き方じゃない
戦争責任の感じ方は時代によって、個人の気持ちによってそれぞれ違うと思う
そもそも日本や琉球は中国の冊封体制の辺境の属国で、いつ独立したのかわからない
国学が近代最初の第一次革命みたいなもののイデオロギーの大部分になった
戦争なんて滅多に自分のほうから仕掛けられるものではない
自意識が「ある」「ない」というのは持続性や永続性に関係する

時代の自意識について

社会的だからいい、あるいは政治的だからいいという評価は文学には全然ない
「政治家としての自己」として、郵政民営化のとき小泉はすべてのことをやっている
六〇年安保のときは一兵卒でやればいいんだと自意識的にやりました
さまざまなことが刺激され、想像できるのであれば芸術は成り立つ
現在の情況において、どうすれば公共的な方策に自意識を持ち出すことができるのか
いまの若い人はかなり本物になってきている
自意識の問題は、無限の以前と後のつなぎ方と情況の問題を一緒に考えなければならない
未来に開いていくやり方を少数でも考えないと、日本の左翼性は終わりになってしまう
現代は静かで平穏だが、大変な時期にさしかかったというのが僕の情況的な実感
バブル時代は、個人企業も含めて中小企業以下が何かできる一つのチャンスだった
日本の戦後で革命と言えるのは、占領軍による農地改革ただ一つです
西洋型の社会構造に移りつつあるということが、いま言われている格差社会ではないでしょうか
勤勉な人たちが一〇〇倍ぐらい日本の社会を進歩させ、教育が一〇〇〇倍ぐらい進歩させた