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That's Japanシリーズ

日中相互実益時代がやってきた

日中相互実益時代がやってきた
中国を怖がっているだけでいいのか

平松守彦/莫邦富 著

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価格 1500円(本体価格)+税 
ISBN 978-4901391-71-9
発売日 2006/04
ページ数 200ページ
版型 四六判 ソフトカバー
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概要

中国脅威論という逃げの発想では何も生まれない

中国でも一村一品運動を展開し成功させている平松守彦前大分県知事と、気鋭の中国人ジャーナリスト莫邦富が、「実益」をキーワードに具体的な解決方法を示す。異色の組み合わせによって実現した日中の新たな関係の構築の姿が浮かび上がる待望の書。

中国脅威論から日中積極共存論の時代へ!

日中間のギクシャクが続いている。このままでは両国だけでなく、アジアそして世界にとっても、悪い結果を残す。しかし、時代状況はさらに高度な対応が必要となっている。政治家の乾杯外交はもはや通用しないし、国益だけを優先する時代でもない。本書ではそうした現状を踏まえ、大分県だけでなく活動場所をアジアに広げている平松守彦前大分県知事と、親日派で知られる辛口ジャーナリスト莫邦富に、両国に求められている具体的な関係のとり方や、相互のマインドの持ち方について語ってもらった。キーワードは“実益”。そこからしか日中そしてアジアや世界の問題の解決方法はない。

平松守彦(前大分県知事)

1924年、大分県大分市生まれ。東京大学法学部を卒業後、1949年旧商工省(現・経済産業省)に入省。国土庁(現・国土交通省)長官官房審議官などを経て、1979年大分県知事に就任。「一村一品運動」を提唱、当時イメージの薄かった大分県を全国に知らしめた。知事を6期24年間務め、2003年に退任。現在、NPO法人・大分一村一品国際交流推進協会理事長などさまざまな役職を務める。1995年、「アジアのノーベル賞」と呼ばれるラモン・マグサイサイ賞受賞。著書に『地方からの発想』、『一村一品のすすめ』などがある。

莫邦富(ジャーナリスト)

1953年、中国上海市生まれ。上海外国語大学日本語学科卒業後、同大学講師を経て、1985年に来日。1995年に莫邦富事務所を設立。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で活躍中。博報堂スーパバイザ、東京MXテレビ放送番組審議委員などを務める。『蛇頭』、『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。最新刊は『中国語ネーミング開発ハンドブック』。現在、朝日新聞be(土曜版)に「mo@china」を好評連載中。

目次

ソフトパワーで切り開く日中関係

一村一品運動とは「官をして民に倣わせる」こと
ソフトパワーとしての一村一品運動
三十年前から中国で注目されていた一村一品運動
中国の貧しい村でつくられた一村一品のリンゴ
中国は二〇一〇年までに農民人口を五五%に下げる
農業・農民・農村を一体で考えてはいけない時代 「天」ではなく「県」は自ら助くるものを助く
中国は製造工場かそれとも市場か
一村一品の原則はローカルにしてグローバルなもの
地元や自国だけでものを考える時代は終わった
トヨタの車よりレート的に高額な「どんこシイタケ」
九州のマーケットはASEAN+3だ
実益があるから友好を語れる時代
国家は通貨と国防と外貨、地方は公共事業と農業を担当
「打倒釜山」へと変わった中国の港湾
日本は本当に資本主義の国ですか?
アジアにおけるローカリゼーションの到来

WIN−WINが築く新しい東アジア共生の道

日本の持続的成長を維持するための連邦制・道州制
分権時代に求められる地方の意識改革
地方が競争することで、これまでの悪平等がなくなる
地域力を高めるための地域分権国家
自分で鍛えて培った体力で地方経済を興す
上下間にある意識と認識のギャップ
地域のモチベーションがつくる地域の魅力
地方分権は地域の魅力をつくること
高齢化社会における行政サービス
農業問題の解決を迫られる中国
なぜ中国の農村地帯で暴動が起こっているか
新しい農業のスタイルとシステムが求められている
日本と中国は地震多発期に入った
民間交流で切り開く日中間の新しい関係
WIN−WIN関係を実現させるために
「銀座の街角に立って、行き交う日本人の言葉を聞きたい」と思った
中国との出会いは漢詩で、『唐詩選』はいまでも愛読書
中国の昔の文化が中国国民を束ねるツール
中国によるジャパン・パッシング
日中の友好関係を担うのはこれからの若い人
日本は収穫を知らない種まき人
見直しが必要なODAのあり方
中国は何を考え、何をしようとしているのか
中国の連邦制の可能性
中国国民の生活実態
靖国問題と中国の対応
「適切にやってきた」結果としての日中戦争と太平洋戦争
メディアの影響が大きい時代の正しい判断力
検証すべき中国嫌い、日本嫌いの内容
アジアは一つではなく、一つひとつから始める
アジアのアイデンティティに何を求めるか

書評・感想

「齋藤貴男の読書日記」より引用

(『週間東洋経済』2006年7月8日)
中国の脅威を煽り立てるだけでは何にもならない。媚中派などとの愚劣な用語は、さっさと死語にしてしまおう。
みんなで議論し、未来への道筋を牽いていきたい。元大分県知事の平松守彦氏と知日派の中国人ジャーナリスト・莫邦富氏とが語り合った『日中相互実益時代がやってきた』(ウェイツ)を読むことが、そのための第一歩になる気がした。
平松氏は県知事時代に成功させた一村一品運動を、中国にも導入した実績がある。一方の莫氏は、中国に進出した日本企業の問題点を追及しては改善させてきた。ともに実践者であり、かつ、深い構想力を持ち合わせた人物だ。
政治家同士が「乾杯!」で丸く収める時代は終わった。実益が伴う相互依存関係こそが友好を促す。そうなれば中国脅威論などはたちまち意味を失う。確かに。
「日中は運命的に隣近所でなければならない。嫌だからといって、どこか別の場所に引っ越すことはどちらもできません。(中略)そうすると、両方の指導者と国民が平和的に問題を解決しようとする大原則を守れば、時間はかかるにしても、いずれ問題は解決できるでしょう」。莫氏は述べている。真理ではなかろうか。

「日本と中国」書評欄より引用

「一村一品」運動で全国に“大分ブランド”を知らしめた平松守彦元大分県知事と辛口で知られる知日派ジャーナリスト莫邦富氏が対談した。テーマは農業・地方分権・靖国など多岐にわたった。世代も経歴も異なる二人に共通するのはしなやかな発想と実践的な思考法。平松氏は中国でも「一品一村運動」を展開し成功させている。
キーワードは〈実益〉。二人は日中間のギクシャクを〈実益〉=利を伴う相互扶助をもって解決する具体策を提案する。「中国脅威論から日中積極共存論への転換」がすでに時代の要請であることは明らかだ。