トップページ That's Japanシリーズ 絶望から出発しよう

That's Japanシリーズ

絶望から出発しよう

絶望から出発しよう

宮台真司 著

著者のホームページへ

価格 750円(本体価格)+税 
ISBN 978-4901391-30-6
発売日 2003/02
ページ数 168ページ
版型 A5変形判 ソフトカバー
紀伊国屋でこの本を買う Amazonでこの本を買う ビーケーワンでこの本を買う 電子書店でこの本を買う

概要

気鋭の社会学者が語る絶望の日本、そして新たなビジョン

いったいこの国はどうなっているのか? 旧いシステムはそこから生み出される問題を解決できないし、超えることもない。気鋭の社会学者・宮台は、市民エリートの育成を呼びかけ、ロビー活動を始めた。「アホ」な官僚や政治家任せをやめ、自分たちでチェックしないと座して地獄に墜ちるしかないと危惧するからだ。
敗戦・占領下の日本人の「虚脱」には飢餓にも負けない夢があった。一方、いまの日本は、あらゆる領域において戦後以上に絶望が深いと氏は断言する。では、どういうシステムを構想すべきなのか?
ヒントは戦中・戦後の歴史にある。そして忘却のかなたに置かれた「アジア主義の顛末」から始めてみよう。

宮台真司(都立大学助教授)

1959年宮城県生まれ。東京大学文学部卒、東京大学大学院博士課程修了。社会学者(社会システム論)。東京都立大学助教授。政治からサブカルチャーまで、多岐にわたる分野を研究。大胆かつ鋭い分析によって、さまざまなメディアで活躍する。最近はロビー活動も精力的に行っている。主な著書に『まぼろしの郊外』、『終わりなき日常を生きろ』、『漂流するメディア政治(共著)』など。

目次

「まったり革命」その後

予期しなかった「近代」の閉塞
「近代」が終わりなき日常に動きだした
テレクラ愛好家を引き付けるポストモダン建築
「ポストモダン」はモダンを超えない
良き妻、良き母を支える「裏側」
隔離から免疫化へ
ブルセラ女子高生は道徳的である
「表現」と「表出」
精神のバランスを保つコミュニケート
期待される存在であることが危ない
尊厳のリソース不足が状況を深刻にする
社会が回っているとモノが見えにくくなる
多元化、流動化する共同体
ノイズに撹乱されないコミュニケーション
インフラ次第で「出会い系」は広がる
社会に関わる自意識をリニューアルする
日本の“リアル”が見えてくる

市民エリートを育てよう

思考停止状態でつくられている法律
ロビー活動は必要だ
自由を守るはずの公安が自由を脅かす「公安の逆説」
利権官僚が暗躍している
対抗エリートという概念が欠けている
人材という「弾」がない
民度を上げよ
日本のガン!! 金融とマスコミ
国を売り飛ばす輩がいる
目を覆わんばかりの外れな政策論議
アメリカの戦後統治をどう捉えるか
「国益増進」から生まれた安保条約の誤謬
「親米愛国」というまやかし

アジア主義の顛末に学ぶ

右翼思想の源流
「弱者」と「強者」の関係
「弱者の思想」で鼓舞しつづけるアメリカとイスラエル
マイノリティという「美」の条件
アイデンティティが消えるかもしれない
力を獲得した弱者の行方
アジア主義をめぐる歴史に学ぶ
思想そのものが負うべき責任
忘却しないために歴史に学ぶ

絶望の深さを知れ

この社会は生きるに足らず
システムの一側面に過ぎないという苦悩
絶望が足りない
「ここにいる私が素敵」な村上ワールド
敗戦直後より悪くなっている日本
国家が単独で立ちゆくというのは幻想に過ぎない
パウロの布教戦略に学べ
「絶望」の創出は可能か

書評・感想

「絶望から出発しよう」(宮台真司著)を読んで

宮台先生のホームページで本書を知り、早速購入し、一気に読み終えました。本書の優れている点は、これまで宮台先生が語っていた内容がより簡明に述べられており、これまで何度となく読んできた宮台本をより正確に理解する手引き書となっていることだと思います。本書を熟読することで、社会や自分の位 置・あり方を考えるヒントが得られ、次なる選択肢をでたらめに選ばない頭づくりができると思います。(匿名希望)
まず、質問がいい。質問がいいから宮台からエキスのような答えを引き出している。宮台の著作をよく読みくだいている質問者は名前が出ていないようだが、どなたなのでしょう。「That's Japan」の企画がこんな質問者によって名だたる論客に対していくシリーズになれば、すばらしいシリーズになる予感がする。最後の結論もいいが、火中の栗「アジア主義」の良質の部分が取り出せれば、有効な力を発揮することになろう。「同感です」と答えた姿の見えないインタビュアーと共同作業のようにして進められるだろう今後を期待してみていきたい。(福島県 男性)
氏のここ数年のスタンスが整理されていてよくわかる。「まったり」派は結局、体制維持派ではないのか。その潜在力を喚起するには?市民エリート、ロビー活動の線の今後の展開方針、およびなぜそれら全てを宮台氏が負わねばならない状況にあるのか、議論はもっと拡げられそう。期待。(東京都 27歳男性)
「絶望を自覚した上での対処」という提案にはほとんど同感です。また「力」を得ることで文化的な「美」を喪失する、思想は実践で成功させねばならない、歴史はEUの理想を崩す形で繰り返している、などの厳然とした現状認識と、政治家も含む多くの人々が思考停止して絶望を簡単に発散させてしまい、戦略に結びつかないことへの批判も素晴らしいと思います。ただ、「志」を培う教育を宗教抜きに醸成する具体案は如何なるものか、宮台さんの案をもっと具体的に詳細に書いていただきたく思いました。続編希望します。(愛知県 34歳)
著者の「社会システム」観からの発想がなるほどと思わせられる。がしかし、それだけではないだろうという感じがするも、なかなか言語化できないのがもどかしい。戦後の歴史の内実をあまりにも知らないことにがく然とし、知らねばならぬと切実に感じさせられた。白石一文の小説の解釈に読後何か釈然としなかった部分がすっきり明確になって納得。これは素晴らしい小説で気に入っています。パウロの隣人愛についてはもう少し説得力がほしいと思いました。 (大阪府 女性)
読みごたえがありました。自分がどういう見なしまちがいを元にたてられた論をうのみにしてきたかがクリアに見えてきます。特にアメリカの戦後統治の整理のしかたはストンと落ちます。「表現」と「表出」の違いについても学ぶところがありました。宮台さんの本を読むたびごとに自分が脱皮していく快感を味わっています。次回の作品を楽しみにしております。(茨城県 45歳女性)