人文・社会
概要
イスラエルが敵対国イランの石油を買った。
その裏にある男がいた。
犯罪者か、国賊か、それとも世界を潤した“一流”トレーダーか!?
マーク・リッチは巨大資本の石油メジャー独占の市場に風穴を開け、原油のスポット市場を創出した。世界最強の資源トレーダーとして名を馳せたが、アメリカの禁輸国イラン、南アフリカ、キューバと取引を行い、アメリカ司法当局から“国賊”扱いされ、追及を受ける。スイスに移りその後17年間も追われ続けるが、クリントン元大統領が在職最終日に劇的な特赦を決定。一貫して無実を主張するマーク・リッチだが、そこにジュリアーニ前ニューヨーク市長の政治的野望もからむ。果たして真実はどこにあるのか。マーク・リッチの半生が初めて克明に明らかにされた、世界的な話題作でありベストセラー。
主な内容
◆ ナチスのユダヤ人迫害から逃れてアメリカに定住
◆ 世界最強の資源トレーダーになるまで
◆ 脱税等でアメリカ司法当局から追われ続ける日々
◆ 禁輸国イラン、南アフリカ、キューバとの取引
◆ 第一線を退いてからの慈善活動
著者プロフィール ●ダニエル・アマン
1963年12月、チューリッヒ生まれ。スイス在住。政治学、歴史学、憲法学のMA取得。06年にはスイスで経済ジャーナリズムのメディア賞、07年にはビジネスジャーナリズムの分野で「ジョージ・フォン・ホルツブビンク賞」を授賞。『キングオブオイル』は世界的なベストセラーとなる。
訳者プロフィール ●田村源二
1947年生まれ。英米仏の翻訳で活躍。「日米開戦」「合衆国崩壊」などトム・クランシー著の一連の作品のほか、最近では「ゲーム理論で不幸な未来が変わる!」など。
目次
謝辞
第一章 まぎれもないキング・オブ・オイル
第二章 最大の悪魔
マーク・リッチに会う/チャーミングで狡猾/彼は神だった/最後のフロンティア/紋切り型の反ユダヤ主義的非難/最大の力/サンモリッツでのスキー
第三章 ユダヤ人の運命
ホロコーストを逃れて/カサブランカ/すべてを失ったが、生き延びられた/小柄で、訛りがあり、ユダヤ人だった/最大の影響
第四章 アメリカン・ドリーム
ユダヤ人の伝統/最初の取引/市場の創出/デリケートな職務/フィデル・カストロのキューバ革命/ファシズム・スペインの友人たち/アメリカン・ヒーロー
第五章 目覚めた原油
世界初の原油禁輸措置/セブン・シスターズ/石油国有化の波/適時適所にいた適任者/ピンカス・グリーン
第六章 イスラエルとシャー
トップシークレットのパイプライン/シャーとの取引/原油仲買人/第四次中東戦争(ヨム・キプール戦争)/退社
第七章 マーク・リッチ社
秘密保全と税金/遺恨の争い/イランの石油のおかげ/一九七四年のオイルショック/より速く、より長く、よりアグレッシブに/スポット市場の創出/信頼の秘密/魂まで食べられてはだめ/グローバリゼーションのパイオニア
第八章 アヤトラ・ホメイニとの取引
ホメイニの帰国/アメリカ大使館人質事件/一九七九年の第二次オイルショック/われわれは原油を入手でき、競争相手はできなかった/イスラエルを救う
第九章 訴訟
マーク──だれだって?/ショットガンをバンバン撃って/スイスへの逃亡/ルドルフ・W・ジュリアーニの登場/厳しい罰金/十字砲火/史上最大の脱税/原油価格の規制/イカサマ取引/検事の核兵器/無条件降伏
第一〇章 ルディ・ジュリアーニの失敗
不可解な沈黙/頑なになったスイス/アメリカの法的孤立主義/多すぎるミス/推定有罪/五つの欠陥/リッチの妨害/政治的訴訟
第一一章 法を犯したことは一度もない
スケープゴートが必要だった/はなはだしい過剰反応/リッチが犯した最大のミス/アメリカへ戻らなかった理由
第一二章 マーク・リッチを捕まえろ
政権内からのリーク/コードネームは〈リドラー〉/リッチ、ロンドンの霧に救われる/とても用心していた/アヴネル・アズレイ/哀れをもよおす努力/秘密の保護?/わたしを破滅させるキャンペーン
第一三章 秘密交渉
マーク・リッチとの秘密の会合/刑務所暮らしは一日たりとごめんだ/逃亡犯とはいっさい交渉しない/懲罰時代
第一四章 成功の秘密──アンゴラから南アフリカまで
長期思考だ、愚か者め!/賄賂/ミスター・リッチの才能/アイン・ランド/謎の人物、ムッシュー・ヌドロ/アンゴラの不条理/ジャマイカに夢中/南アフリカ戦略/独裁者との取引
第一五章 驚くべき貢献
イスラエルとエジプトの和解/封印された文書/アメリカ政府への秘密協力/モサドを助ける/イエメンからの脱出/イスラエルとイランの仲をとりもつ非公式の仲介者
第一六章 私生活
帰ってこないで、ダディー、お願い/娘の墓はイスラエルへ/デニーズ・アイゼンバーグとのお見合いデート/家族の価値観/厳しい父親、仕切る母親/ソングライターになったデニーズ/長身でブロンドのドイツ女/遅れるんじゃない/マークは家庭を破壊した/デニーズに三億六五〇〇万ドル/わが最大の失敗
第一七章 キング・オブ・オイルの最期
リッチ、最悪の取引/離脱/魚を捕まえられなければ……/ポケットのなかにリッチがすこしいる/マーク・リッチ、ついに去る/力が衰えた/不運なカムバック/貧者として死ぬ恐怖/慈善家
第一八章 特赦
大騒動/特赦の根回し/秘かに進めるのが肝要/エフード・バラクの支援/和平プロセスへの資金提供/デニーズ・リッチの役割/微妙な金銭的手打ち/エリック・ホルダーの役割/クリントン大統領のモチベーション/道理にかなっているが道義的に悪い/税金に関する取引/アメリカにはもう戻らない